事件の概要
本件は、原告(第1審原告)が被告(第1審被告)の公務員の行為によって被害を受けたとして損害賠償を求めた裁判である。原告は、株式会社地域開発研究所(RDC)の取締役であり、公務員の違法な行為により辞任を余儀なくされたと主張した。
判決の要旨
控訴審では、第1審判決を変更し、被告は原告に対し、528万円および遅延損害金を支払うよう命じた。一方、原告のその他の請求は棄却され、訴訟費用は原告が大部分を負担することとなった。
事件の詳細
原告は、RDCの代表取締役として、国と公益法人との随意契約問題を解消する活動や、東京湾第2海堡の保存活動を行っていた。これらの活動が公務員の不興を買い、公務員はRDCの他の取締役に対し、発注の中止を示唆し、企業の存続に脅威を与えることで、原告を取締役辞任に追い込んだとされる。
加害行為と主張
- 随意契約問題
- 原告は、随意契約問題の解決を目的として、国会議員にRDCの業務実績資料を提供した。この資料が予算委員会で取り上げられたことにより、国土交通省の担当者はRDCに対する発注の見直しを示唆し、原告の辞任を求めた。
- 第2海堡保存活動
- 原告が東京湾第2海堡の保存活動を行っていたことも問題視され、関係公務員はRDCへの発注中止を示唆し、原告の辞任を求めた。
損害とその評価
原告は、これらの公務員の行為により、RDCの取締役を辞任し、保有株式を譲渡することを余儀なくされた。原告が主張する損害は以下の通りである。
- 役員報酬相当額: 4743万円
- 退職金相当額: 2800万円
- 慰謝料: 1000万円
- 弁護士費用相当額: 854万円
被告の反論
被告は、原告の主張する公務員の行為が職務権限外の行為であるとして、これを否認した。また、原告の辞任がRDC内部の経営判断によるものであり、公務員の行為との因果関係を否定した。さらに、消滅時効の成立を主張し、原告の請求を棄却するよう求めた。
判決の理由
裁判所は、原告の請求の一部を認め、公務員の行為が職務の範囲に属し、原告に対する損害賠償責任を認定した。ただし、原告の全ての請求が認められたわけではなく、一部の請求は棄却された。
結論
本件は、公務員の職務による違法行為が企業の経営に深刻な影響を及ぼし、役員の辞任を強いる結果となった事例である。裁判所は、一部の損害賠償請求を認めつつも、全ての主張が認められたわけではなく、訴訟費用の大部分を原告が負担することとなった。この判決は、公務員の職務行為が企業に与える影響と、その法的責任について重要な示唆を与えるものである。